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院長BLOG

頭が堅い迷惑な医者

2016.6.29 カテゴリー|湿潤療法

今日は夏井先生のウェブサイトの症例報告から

http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/1922/index.htm

 62歳女。福島県在住。
 慢性関節リウマチで平成6年,10年に両側膝関節人工関節置換術を受けている。その数年後から両側下腿に潰瘍が発生。皮膚科医院,病院皮膚科を幾つか受診し,軟膏が処方された。6年前に皮膚科医院から静脈鬱滞性潰瘍の疑いで,〇〇病院血管外科を紹介されたが,傷があると検査も治療もできないので,傷を治してもらってから出直すように,と説明され,同院形成外科紹介。アクアセルによる湿潤治療(?)で8ヶ月かかって上皮化完了。
 2015年6月,装具(足底板?)がぶつかって両側下腿に傷ができて褥瘡になった。前回と同じ〇〇病院形成外科を受診したが,医師が変わっていて「アクアセルの治療は聞いたことがない」と言われ,イソジンゲル®とフィブラストスプレー®で治療となったが,治療開始直後から痛みで歩けなくなった。アクアセルについて調べて治療して欲しいと希望したが,消毒液で洗う治療しかないと医師は激怒!
 この医者ではダメだと判断し,家族がインターネットで下腿潰瘍について検索。10月5日に当科受診。「穴あきポリ袋+紙おむつ」(勝手に鳥谷部先生のサイトにリンク)で被覆したところ,痛みが軽くなった。通院できる範囲で湿潤治療をしているクリニックに紹介。

 この症例報告に出てきた。「アクアセルの治療は聞いたことがない」と言い切った医者に対して、同業者として情けない思いでいっぱいです。

 私だったら、アクアセルや湿潤療法について知らなくても、同じような創がアクアセルで治ったと聞かされたら、「そりゃすごいね。ちょっと調べてみよう」と思うはずです。

 何でこんな頭が堅い迷惑な医者がいるんだろうかと、ちょっと考察してみました。
 
 医師になるには、厳しい受験戦争を勝ち残る必要があります。受験戦争では、教科書や学校や学習塾の先生の話を信じて疑わず丸暗記できる人のほうが有利です。
 だから、教科書に載っていることや、先輩からの指導を疑うことなく信じてしまい、それ以外の治療法を学んだり取り入れたり出来ない医者ばかりになってしまうのでしょう。
 
 医学は日々進歩しているから、自分で考えて新しいことをどんどん取り入れなければダメなんだけどねぇ。
 
 
 
 

筋膜リリースってどうよ

2016.6.26 カテゴリー|トリガーポイント注射

筋膜リリースという新しい治療法がテレビなどのメディアで話題になっています。

筋膜(筋肉を覆っている膜)の癒着や肥厚が痛みの原因であるとして、エコーで確認しながら肥厚している筋膜の生理食塩水を注入して、筋膜の癒着をはがす治療法です。

MPS研究会の中心メンバーである木村ペインクリニックの木村裕明先生などがはじめました。

この筋膜リリースについて、加茂先生が考察を述べているので、読んでみてください。

再度 筋膜リリースついて

http://junk2004.exblog.jp/25951658/

 

私は筋膜リリースはやったことがありません。
 なぜやったことがないかというと
 ①健康保険が使えないから
 ②時間がかかるから
 ③トリガーポイント注射のほうが簡単だから
 
 やったことがないから筋膜リリースの効果についてどうこういう資格はありませんが、加茂先生の意見は、生理学的に正しいと思います。
 
 問題なのは、MPS研究会の議論が筋膜リリースなどの技術論に偏っていること。
 技術も大切ですが、それ以上に治療者が慢性痛の生理について理解していることが大切だと思います。
 筋肉の機能異常が原因の痛みがあること、慢性痛は脳の誤作動であって椎間板ヘルニアや半月板損傷などの構造的な異常ではないことなど慢性痛についての正しい知識を広げることが大切です。
 そのためには、技術的に比較的簡単なトリガーポイント注射を広めることが一番の近道だと思います。
 
 慢性痛の原因がエコーで確認できる筋膜の癒着や肥厚だって?
 それって、つまり筋膜の構造的な異常が慢性痛の原因ってことでしょ。
 一周回って元に戻ってね?
 
この意見をFBに載せたら、大学の先輩からコメントが来ました。
「プラシーボ」
 
エコーの画面で筋膜がはがれていく画像を見せたら、かなりの儀式的効果(プラシーボ)がありますよね。
 
プラシーボでもなんでも痛みが取れれば何でもいいというのが私の治療スタンスですが、上記理由で筋膜リリースは今後もやりません。

坐骨神経痛にもトリガーポイント注射が効く!

2016.6.17 カテゴリー|トリガーポイント注射

 80代女性

 半年前から右殿部から脛の外側にかけての痛みが出現しました。

 近くの病院で坐骨神経痛と診断され1ヶ月間入院して治療しましたが、痛みはあまり変わりませんでした。

 退院後も電気治療とトラムセット、リリカの内服による治療を続けていましたが良くなりませんでした。

 近所の人に薦められ、4月に当院を受診しました。

 下図の部位(たぶん小殿筋)にトリガーポイントを認めました。

からだ.jpg

 トリガーポイント注射を2回行ったら、痛みはだいぶ楽になりました。

 その後も、デマンドタクシー(笠間市が運営する乗り合いバス)を2回乗り継いで、週1回通っています。

 注射するたびにどんどん良くなっています。

 

 一般的に坐骨神経痛と言われている痛みは、ほとんどの場合、殿部の中殿筋や小殿筋に出来たトリガーポイントが原因です。

 トリガーポイント注射で良くなります。

 

 

プロレスラーは40年前から湿潤療法を知っていた!

2016.6.17 カテゴリー|湿潤療法

 私が小学生のころはプロレスの全盛期でした。

 当時、プロレス中継を見ていて、試合中にあんなに血を流しているのに、翌週の試合では創が完全に治っているのが不思議でしょうがなかった。

 だから血糊を使っているんだろうと疑っていました。

 

 しかし、その頃アントニオ猪木選手の奧さんだった倍賞美津子さんがラジオでこんなことをお話ししていました。

 「プロレスラーは切り傷や擦り傷に、ゆで卵の薄皮を貼り付ける。そうすると自然とすぐに創がくっついて治ってしまう。」

 

 当時は、ピンと来ませんでしたが、これって湿潤療法だよね。

 おそらく薄皮をとったゆで卵はそのまま食べたのでしょうから、タンパク質も補充できるし、もちろんプロテインも飲んでいたでしょう。

 そりゃ一般人の常識より早く創が治って当然ですよね。

 血糊を使っているとか疑ってごめんなさい。

  

 夏井睦先生が湿潤療法を紹介するウェブサイトを立ち上げたのは15年前です。

 それよりもずっと前に、常に怪我と隣り合わせのプロレスラーは、早く創を治す必要性から、湿潤療法にたどり着いていたのですね。

 

 

 

テリボンと加圧トレーニングが有効だった骨癒合不全症の一例

2016.6.16 カテゴリー|骨折・捻挫の治療

 50代の女性

 転倒して左手をついて受傷しました。

 すぐに当院を受診。レントゲン上、手首の骨折(橈骨遠位端骨折)を認めました。

 転位を認めたので、局所麻酔後にテレビレントゲンで確認しながら骨折を整復しました。

 その後シーネ(添え木)固定しました。

 3週間後、レントゲンで骨癒合がえられたと判断しシーネを外しました。

 ところが、その2週間後のレントゲンで、骨癒合が十分でないことが判明しました。

 下図のレントゲンの矢印の部分の骨に黒い線が入っているのがわかると思います。

14295a.jpg

 手首の軽度の痛みと、指や手首の動かし難さ(可動域制限)も残っていました。

 骨癒合を促すためにテリボン注射を開始しました。

 同時に、可動域制限の改善と骨折部の血流を改善させる目的で加圧トレーニングも開始しました。

 下図は2ヶ月後のレントゲンです。

14295b.jpg

 骨癒合がえられました。

 痛みや可動域制限も改善しました。

 

 骨癒合不全にはテリボンと加圧トレーニングが有効と思われます。

 テリボンは骨粗鬆症がない若い人には使えないけどね。

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