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ぎっくり腰を脊椎麻酔で治療した貴重な症例

2020.4.09 カテゴリー|トリガーポイント注射

 私のゴルフ仲間で産婦人科の大ベテラン先生から若い頃にぎっくり腰になったときの話を聞きました。

 ぎっくり腰になり動けなくなったので、同僚医師に頼んで脊椎麻酔をかけてもらったら、すぐに良くなったとそうです。

 脊椎麻酔とは背骨の中を通っている脊髄(せきずい)という太い神経の入っている袋(脊髄腔)に針を入れ、その中に局所麻酔薬を入れることによって下半身(下腹部、下肢、足)の痛みを取る麻酔法です。脊髄くも膜下麻酔によって下半身(概ね臍から下)は感覚がなくなり、足を動かすこともできなくなります。患者さんの全身状態によっては血圧や呼吸に大きな影響をあたえることがあるので、全身管理が出来る環境(手術室など)で行います。

 脊椎麻酔は手術のための麻酔なので、ぎっくり腰の治療に施行することは健康保険上、認められていません。なので整形外科医にはぎっくり腰を脊椎麻酔で治療するという発想自体ありません。もしかしたら、ぎっくり腰に脊椎麻酔をかけた世界で唯一の貴重な症例なのではないかと興味深く話を聞きました。

 ぎっくり腰の原因は、腰やお尻にある筋肉の急激な痙攣です。脊椎麻酔をかければ腰から下の神経がすべて麻痺します。筋肉も完全に麻痺して弛緩するため激痛の原因である筋肉の痙攣は止まります。これがぎっくり腰に脊椎麻酔が効いたメカニズムだと思います。

 トリガーポイント注射のパイオニアである加茂淳先生は「椎間板ヘルニアの手術で一時的に痛みがよくなるのは、(手術によるプラセボ効果と)全身麻酔の時に使う筋弛緩剤で筋肉の痙攣がなくなり、トリガーポイントが一時的に改善するからだろう。」と言っています。

 今回の症例の結果から、加茂先生の仮説が裏付けられたと思います。

 

 ぎっくり腰の激痛の原因は筋肉の痙攣です。なので筋肉の痙攣を止めれば痛みは止まります。

 でも脊椎麻酔は健康保険上行うことは出来ません。自由診療でやるとしてもリスクが高すぎて外来で行うことは出来ません。

 その代わりに、トリガーポイント注射を打ちます。トリガーポイント注射で痙攣している筋肉に直接麻酔をかけることで激痛を和らげることが出来ます。

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