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青なじみ(青あざ)は移動しますよ

2020.11.12 カテゴリー|医療に関する迷信

 前回に続いて青なじみの話です。

 例えば、膝をぶつけた場合、足首の方まで青なじみが広がることがあります。

 肩を骨折した場合、青なじみが肘や手首の方まで広がります。

 これは、内出血した血液が重力にひっぱられて皮下脂肪の中を移動しただけなので、なんの心配いりません。

 もちろん、湿布を貼っても意味はありません。

 内出血がひどいと浮腫が伴うことがあります。

 その場合は、指や手首や足首の関節をどんどん動かせば、筋肉のポンプ作用で血液の流れが良くなって浮腫が改善します。

 

 子供がおでこをぶつけてタンコブができると、そこから内出血が広がって目のまわりがパンダみたいに青なじみになることがあります。

 この場合も自然に消えるので、湿布を貼ったりしないでください。

 隠すために眼帯なんかすると、小さい子はそれだけで視力が低下することがあるので絶対にやらないでください。

 

 青なじみは移動しますよ。怪我したところ以外に青なじみが広がっても心配しないでくださいね。

青なじみ(青あざ)に湿布を貼っても意味ないよ

2020.11.10 カテゴリー|医療に関する迷信

 青なじみとは茨城弁で内出血による青あざのことを言います。

 「青なじみがあるから湿布が欲しい。」と求めてくる患者さんがたくさんいますが、青なじみに湿布を貼っても意味ないよ。

 いったん皮下組織に広がった血液は、自然と吸収されるのをまつ以外消す方法はありません。通常1~2週間で消えます。どんなにひどい内出血でも跡が残ることはありません。

 外から湿布を貼っても何の役にも立ちません。医療費の無駄です。

 

 受傷直後に受傷部を氷などで冷やすことは、患部の腫れや内出血を防ぐ効果があります。

 この場合も氷などで物理的に冷やさなければ効果はなく、湿布や冷えピタでは全然意味がありません。

 

 湿布には腫れや青なじみを治す効果はありません。

 湿布はあくまで痛み止めです。痛くないところに貼っても意味はありません。

 

何度も書くけど、紹介状なしで大きな病院にかかっちゃダメだよ

2019.9.19 カテゴリー|医療に関する迷信

 70代の女性

 2ヶ月前から、上下肢の痛みが出現しました。すぐに、某総合病院整形外科を受診しました。若い医師に診察を受け、頚椎と腰椎のMRIをとり異常なしだったので、ノイロトロピンとリリカが処方されました。

 薬を飲んでも痛みがどんどん悪化するため、1ヶ月前に知人の紹介で当院を受診しました。

 

 痛みを訴えている手足を診てみると、ひどくむくんでいました。触診すると、痛いのは上下肢全体ではなく、肘や手首などの関節でした。関節リウマチやRS3PE症候群などの膠原病の可能性があると診断し、血液検査を行いました。

 その結果、体に炎症があると上昇するCRPと白血球が異常高値だったので、同じ某総合病院のリウマチ膠原病内科に紹介状を書きました。

 

 患者さんは「某総合病院の若い先生は、コンピューターの画面ばかり見ていて、痛いところを診てくれなかったし、顔も合わせてくれなかった。」と言いました。

 私は「そりゃそうだよ。まだ研修中の先生なんだから。某総合病院みたいなでかい病院は、若い先生の研修期間でもあるんだから、紹介状もなしに受診すると若い先生の練習台にされちゃうよ。画面ばかり見て、患部を診ないのは経験不足だから、顔を見ないのは自信がないからだよ。」と答えました。

 

 後日、リウマチ膠原病内科の先生からお返事があり、関節リウマチまたはRS3PE症候群の可能性が高いので精査加療するとのことでした。

 

 何度も書くけど、紹介状なしで大きな病院にかかっちゃダメだよ。

「交通事故にあうと、後から痛くなる」は迷信(再掲)

2019.8.20 カテゴリー|医療に関する迷信

 交通事故にあって、痛みも痺れもないのに、「後から痛くなると困るから検査してください」と言って、受診する患者さんがけっこういます。
 
 先日も、交通事故にあってから10日くらい経っていてどこも痛くないのに会社の先輩たちから「後から痛くなると困るから検査を受けたほうがいい」と勧められて受診した患者さんがいたので、6年前に書いたブログを再掲します。
 
 こういう患者さんが来ると、いつも困ってしまいます。どこも痛くない人の、何を調べらばいいのでしょう。全身のレントゲンでもとればいいのでしょうか?一応、事故の時に痛くなることが多い、首と腰の動きを調べて、痛みによる動きの制限がないことを確認して、「心配ないでしょう。交通事故の痛みが後から来るとというのは、迷信です。」と説明しています。
 
 交通事故にあって、骨折や脱臼など、レントゲンで分かる怪我を負ったときは、事故直後から強い痛みがあるはずです。それ以外の、レントゲンやCTやMRIなどの画像所見で異常がない痛みは、事故による筋肉痛です。
 
 事故による筋肉痛には2種類あって、事故の衝撃で筋肉がのばされたことによる筋肉痛と、火事場の馬鹿力による筋肉痛です。通常、筋肉は最大筋力の30%くらいしか使えないようになっています。それ以上の筋力を使うと筋繊維が壊れてしまうからです。しかし、事故にあった場合などは、体を守るために100%の力を発揮します。これを、昔から火事場の馬鹿力とよんでいます。火事場の馬鹿力を出すことで筋繊維が壊れ筋肉痛を起こします。
 
 子供の運動会などで、急に走ったとき、翌日や翌々日くらいに筋肉痛が出た経験がある方はたくさんいると思います。それと同様に、交通事故による筋肉痛も3日以内に出現します。そして、ほとんどの場合、運動会の筋肉痛と同様、1週間くらいで良くなります。
 
 つまり、交通事故の痛みは、通常3日以内に発生します。それより後に出た痛みは、交通事故と関係がない痛みです。
 
 それから、レントゲンを撮っても、MRIを撮っても、CTを撮ってもどんなに検査をしても後から出るかもしれない痛みの原因を見つけることなんて不可能です。なので診察を受けても意味がありません。
 
 「交通事故にあうと、後から痛くなる」というのは迷信です。

丁寧な説明が「呪いのことば」になってしまう悲劇

2019.8.16 カテゴリー|トリガーポイント注射

 40代の男性

 3日前から右膝が痛くなり当院を受診しました。

 念のためレントゲンを撮りましたが、右膝の骨には全く異常はありませんでした。

 触診すると右大腿四頭筋内側広筋にトリガーポイントを認めたました。

 それより何より、右大腿四頭筋の著しい萎縮を認めました。

 話を良くを聞いてみると、5年前に足首を骨折して、某病院で手術を受け、そのときに「(骨折で足首が変形したから)将来、膝も痛くなるでしょう。」と言われたそうです。

 それでずっと膝をかばって生活していたようです。
 
 「それは、『将来、膝も痛くなることもあるかもしれない。』程度の話です。よけいな心配して、膝をかばっていたから、こんなに筋肉が萎縮してしまったのです。どんどん動かさないと、かえって痛みがひどくなってしまいますよ。」
 と説明したけど、通じたかな?
 トリガーポイント注射も受けていかなかったし、呪いは解けなかった可能性が高そう。
 
 30年くらい前からインフォームド・コンセントという言葉がでてきて、手術前に患者さんには起こりえる合併症や副作用について十分な情報提供をして、納得してもらって同意を得てから手術をするということが病院で行われるようになりました。
 これは、はっきり言って医療訴訟対策です。
 後から訴えられないように、前もって細かく説明するのです。真面目な医師ほど細かく説明します。
 
 でも、心配性な患者さんは、滅多に発生しないような合併症についても、必ず発生するのではないかと不安になってしまいます。
 心配性の患者さんには、ドラマの女医のように「私、失敗しないので!」と言ってあげるのが一番安心してもらえるのですが、さすがにそれは無理です。医学は何が起こるかわからないので。
 私なんかは、ざっくりと「手術は温泉治療と違って、いろんなことが起こる可能性があるけど、そのときは全力で対応します。」と説明していました。
 おかげさまで一度も訴えられたことはありません。運が良かっただけですけどね。
 
 丁寧な説明が、患者さんの受け止め方次第では「呪いのことば」になってしまうこともある。
 ということです。やはり医学は何が起こるかわからない。

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