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親の夢を子供に押しつけるのは危険だよ

2021.3.16 カテゴリー|その他

こんな悲しい記事を読みました。

 

医学部受験で9年浪人 〝教育虐待〟の果てに…
母殺害の裁判で浮かび上がった親子の実態

https://this.kiji.is/741154375854899200?c=39546741839462401

 

 この記事を読んで思いだした患者さんがいます。
 私が医者に成り立ての頃、大学病院の整形外科にもう10年近く入院している若い女性の患者さんがいました。最初は腰痛で入院し腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けましたが、痛みが取れずそのまま入院を続けていました。その経過中に、原因不明の右足首の化膿性関節炎が発症し治療しても良くならないため、右下腿部で足を切断しました。切断して感染が落ち着くと、今度は膝関節が化膿性関節炎になり同様の経過で右大腿部で切断。さらにその後、右股関節の化膿性関節炎になり、骨盤の半分を切除しました。
 私が担当したときは、おしりに大きな開放創があり、毎日そこを生理食塩水で洗浄するのが研修医の仕事でした。治療をして感染がおさまってもすぐにまた悪化することを繰り返していました。大学の先生達も原因がわからずただただ対症療法を繰り返すだけでした。
 原因がわかったのは、私が医師になって2年目の時です。いつものように開放創の洗浄をしようとした後輩が創の中からあるはずのない注射針を見つけたのです。そのことがきっかけで、患者さんが自傷行為を密かに繰り返したいた疑いが出て、精神科に紹介することになりました。
 精神科の教授の診断はミュンヒハウゼン症候群でした。
 ミュンヒハウゼン症候群は虚偽性障害に分類される精神疾患の一種で、症例として周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりするといった行動が見られます。
 精神科の教授の分析によると、患者さんは父親に医者になることを強制された結果、精神を病んでミュンヒハウゼン症候群になってしまったということでした。
 この患者さんはその後、精神科で治療を受けましたが症状が改善せず、5年後くらいに敗血症になって亡くなりました。
 
 
 外来にはいろいろな親子が来ます。中にはスポーツやっている子供本人より、親の方が熱心なケースが見られます。このようなケースを見ると、親が子供に自分の夢を押しつけているのではないか、本当は子供はこのスポーツをやりたくないんじゃないか、上記の患者さんのように心を病んでしまうのではないかと、とても心配になります。
 
 女子プロゴルフの畑岡奈紗選手は、娘の同級生です。お母さんのことはよく知っています。奈紗選手に対して両親からゴルフをやるようにすすめたことは一度もないそうです。本人がプロゴルファーになりたいと希望したため両親がバックアップをしただけだそうです。
 
 私も子供たちに自分の医院を継ぐように言ったことは一度もありません。私は自分の好きで開業医になったので、借金を返し終わって、年取ってやる気が無くなったら閉院するつもりです。
 
 私が親から医者になるように言われたことも一度もありません。小さい頃から勉強が得意だったので、一生食いっぱぐれない資格として医師免許をとっただけです。
 

 子供は親とは別人格で、親の所有物ではないのだから、医者でも、学歴でも、スポーツ選手でも親の夢を子供に押しつけるのは危険だよ。

 そこんところよくわかってない親がたくさんいて本当に心配だよ。

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