2019.2.13 カテゴリー|その他の治療について
整形外科の手術にはいろいろあります。
やんないほうがいい手術もやったほうがいい手術もあります。
腰痛の手術は基本的にやらないほうがいいです。(骨折や腫瘍や感染は除きます。)
一般的に腰痛の原因は骨の変形や椎間板ヘルニアが神経を圧迫しているから痛いと説明されていますが、その考えが間違っているからです。
だから、腰の手術を受けた直後はプラセボ効果でしばらく痛みが取れてもまたしばらくいすると痛くなってしまう人がたくさんいるのです。
中には手術をした後で余計に痛くなってしまった人もけっこういますね。
腰痛の原因は腰の周りの筋肉の痛みなので手術などしないでトリガーポイント注射やサインバルタの内服などで根気よく治療した方が結果的には良くなります。
やったほうがいい手術は、変形性膝関節症や変形性股関節症に対する人工膝関節置換術や人工股関節置換術です。
一般的に変形性膝関節症や変形性股関節症は、軟骨が減って変形した骨がぶつかるから痛いと説明されていますがその考えは間違いです。
膝や股関節の痛みも関節周囲の筋肉の痛みが原因です。
しかし、腰と違って、変形した関節を手術でもとの形にもどすことで筋肉にかかる負荷が減って、筋肉の痛みが取れるのです。
人工関節手術の成功率は十年前よりはるかに良くなっています。
それは医師の技術が進歩したからではなく科学技術が進歩したからです。
人工関節置換術は、変形した骨を切除して機械の関節を入れる手術です。
昔は、骨を切除する範囲も、人工関節を設置する場所も医師の経験とカンで行っていましたから、医師の腕の違いで手術成績にばらつきがありました。
しかし今は、科学技術の進歩でナビゲーションシステムが導入され、ある程度の経験がある医師なら正しい位置に人工関節を設置することが可能になりました。
また、人工関節そのものの素材や形状も進化したため、昔は10年で壊れるいわれた人工関節が30年以上もつようになりました。
電話が黒電話からスマートフォンに著しく進化したように、人工関節も著しく進化しているのです。
30年もつのだから、70歳で手術しても100歳までもちます。
80歳以上になって体力が低下してからではリハビリが大変なので、まだ体力がある70代くらいが手術のベストタイミングです。
「人工関節手術をいつやるの?今でしょ!」です。
もちろん私はもう手術をしてませんので、人工関節をしたほうがよい患者さんは、茨城県立中央病院の林宏先生など信用できる先生に紹介しています。
2019.1.08 カテゴリー|トリガーポイント注射
70代の女性
玄関から出るときに膝がカクッと鳴ってから左膝の裏が痛くなり歩けなくなりました。
某病院を受診してMRIを撮り、半月板損傷が減っていると言われ、痛み止めが処方されました。
痛み止めを飲んでもぜんぜん痛みが取れないため、10日後に当院を受診しました。
痛みのため松葉杖をついて診察室に入ってきました。
診察すると下図の部位にトリガーポイントを認めました。
「これは筋肉の痛みだよ。半月板は痛みと関係ないよ。つうか、70歳の人が膝のMRIをとったら、全員に半月板が痛んでいる所見が見つかるよ。ただの老化現象だから痛みとは無関係だよ。ガクッとなったときに膝の裏の筋肉をいためただけだから、痛い筋肉に注射すれば良くなるよ。松葉杖なんかをつかっていると筋肉が弱くなっちゃうから、なるべく普通にあるかなきゃダメだよ。」
と説明して、トリガーポイント注射を打ちました。
翌日には松葉杖なしで歩けるようになりました。
2018.12.19 カテゴリー|トリガーポイント注射
60代の女性
5月にゴルフの練習をしてから左殿部が痛くなりました。
近所の整形外科を受診してMRIを撮り「軽い椎間板ヘルニア」といわれてブロック注射を受けましたが良くなりませんでした。
そのあと某総合病院を受診して、またMRIを撮り「軽い椎間板ヘルニアだけど手術するほどじゃない」といわれトラムセットとリリカが処方されました。
それでも良くならないので、インターネットで調べて名古屋の病院でPLDD(椎間板ヘルニアのレーザー治療)を受けました。
「最新医療だから保険がきかないので1回45万円かかる。」と言われ、PLDDを2回受け90万円払いましたが、良くなりませんでした。
その後で当院を受診しました。
下図の位置にトリガーポイントを認めました。
「ヘルニアは痛みと関係ないよ。ゴルフの練習中におしりの筋肉を痛めただけだよ。トリガーポイント注射を続ければ良くなるよ」
「PLDDに保険がきかないのは、最新医療だからじゃないよ。効果がないからだよ。だって、PLDDは実際は20年以上前からやられているんだから、効果が認められればとっくに保険適応になってるはずだよ。だまされちゃったね。」
と説明しました。
週2回ほどトリガーポイント注射に通ってもらって、1ヶ月後には薬も必要なくなり、ゴルフのラウンドも出来るようになりました。
椎間板ヘルニアとは椎間板の中にある髄核が椎間板の外にはみ出して神経を圧迫する病気です。
PLDDはヘルニアになっている椎間板に、太い針を刺して針先からレーザーを出してなかの髄核を灼いて消失させてはみ出したヘルニアをへっこませるという手術です。
でも考えても見てください。あんパンをつぶして、あんこがはみ出たとき。アンパンの中に残っているあんこを取り除いてもはみ出たあんこは元に戻りませんよね。ヘルニアだって同じですよ。
だからPLDDなんて効くわけないんです。中にはPLDDで治った人もいるでしょう。それはヘルニアが引っ込んだからではなく「こんなに高い金を払ったんだから良くなるはずだ」という思い込みで痛みが良くなったのです。99.9%プラセボ効果です。
そもそも椎間板ヘルニアは痛みと無関係だからね。PLDDなんて効くわけないのよ。
椎間板ヘルニアは腰痛の原因ではない
http://www.nishibori-seikei.com/blog/2016/10/post-638.html
2018.11.28 カテゴリー|トリガーポイント注射
車で1時間くらいかかるところから当院を受診した50代の男性。
3日前に運動をしてから、右脛の外側に痛みが出るようになりました。特に朝起きたときに痛みが強いようです。
右腓腹筋にトリガーポイントを見つけたので、「ただの筋肉痛です。」と説明してトリガーポイント注射を行いました。
痛みは改善しましたが、症状が消えなかったため不安になり近所の整形外科を受診しました。そこでMRIをとり、腰部脊柱管狭窄症と診断されリリカとサインバルタが処方されたそうです。それでまた不安になり当院を再受診しました。
「痛みは筋肉の緊張が原因なので、腰部脊柱管狭窄症は関係ありません。朝起きると痛いのは寝ている間に筋肉が固まるからです。たいして痛くないならリリカもサインバルタも飲まなくていいです。」と説明しました。
腰部脊柱管狭窄症というのは、腰の骨が変形して、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経を圧迫して神経の血流が悪くなり、神経の行っている先に痛みやしびれが出る病気です。
脊柱管は立ったり歩いているときに狭くなり、かがんだり座ったりすると広くなります。なので、脊柱管狭窄症の人は、長く歩いていると痛みやしびれが出て、かがんで休むと楽になり、また歩くと痛みがしびれが出るのが特徴です。これを神経因性間欠跛行と言います。逆に言えば神経因性間欠跛行がなければ腰部脊柱管狭窄症はないのです。
これは腰部脊柱管狭窄症の世界的権威で私の師匠ある菊地臣一先生から直接教わったことなので間違いありません。私が研修医の頃は、患者さんの症状を見るために、患者さんと一緒に歩いたことが何度もあります。中にはなかなか症状が悪化せず5kmも一緒に歩いた患者さんもいました。その結果をふまえてこの患者さんは腰部脊柱管狭窄症ではなく糖尿病性神経障害と診断されました。
それで、最初の患者さんですが、朝起きた直後や、動き始めに痛みがあり、歩いているとだんだん痛みが無くなります。神経因性間欠跛行どころか症状が全く逆です。MRIの腰部脊柱管狭窄はただの画像所見で症状と無関係です。
だいたい、普通に考えて運動後に痛くなるのは筋肉でしょう。腰のMRIなんて撮る必要ないじゃん。医療費の無駄じゃん。
なんでこんな無駄な検査をしちゃうかというと、慢性の筋肉痛があるということを知らないからです。筋肉痛は3日くらいで治ると思い込んでいるからでです。だから、骨や軟骨の構造的異常を探そうと無駄な検査をするのです。
でも、肩こりは慢性の筋肉痛だよね。みんな知ってるよね。同じことがおしりやあしにおきても不思議じゃないよね。何でわかんないかな、脳みそが硬くなってんだろうな。
2018.10.16 カテゴリー|トリガーポイント注射
五十肩の患者さんは夜寝ると痛くて目が覚めちゃうと訴えることが多いです。
五十肩は肩の筋肉に出来たトリガーポイントが原因です。
横になっていると寝返りを打つときなどに肩の筋肉に負担がかかるので痛みが出るのです。
この五十肩の夜間痛にリボトリールがよく効きます。
リボトリールには筋肉の緊張を和らげる効果があり、また副作用で適度に眠くなるので、五十肩の夜間痛に眠れない患者さんに処方すると「夜はよく眠れるようになった。」と喜んでもらえます。
リボトリールは1981年から国内で使用されている「抗てんかん薬」です。
てんかんの患者さんの治療用に発売された薬ですが、古くから慢性の痛みやしびれに効果があることがわかっていました。
私が所属していた福島県立医科大学整形外科では慢性の痛みやしびれにリボトリールをよく処方していました。
トリガーポイント注射で有名な加茂先生も患者さんにランドセンをよく処方します。ランドセンは名前が違うだけでリボトリールと全く同じ薬です。
薬の説明書に「抗てんかん薬」と書かれているので、「これを飲んだらてんかんになるんじゃないか?」と心配なって質問してくる患者さんがいます。
そんなときは「てんかんを治す薬だからてんかんにはならないよ。風邪薬を飲んでも風邪にならないでしょ。」と答えています。